第10回
3月11日 八芳園で過ごした一晩
2011.08.23 [藤井 寛子]
3月11日、東京・八芳園。私があの日、出会った人たちのことは忘れられない…。
「どうぞ。カイロです。お使い下さい。」職員の方が、八芳園にたまたま避難をしてきた方お一人お一人に、カイロ、水、温かいお茶、焼き菓子を配っていた。彼らも皆と同じ怖い体験をしていながらも、にこやかに、そして冷静に対応をしている。暫くすると外も暗くなり、だんだんと寒くなってきた。「皆様、外も寒くなって参りました。どうぞロビーへお入りください。」すると、ロビーにはぎっしりと椅子が並んでいるのが見えた。
皆が中へ入ろうとした時、「大丈夫ですか?」とサラリーマン風の男性がお年寄りを気遣う声が聞こえてきた…。大学生だろうか、就活スーツを身にまとった男女が幼い子供をあやしている…。土地柄だろうか、外国人の方も多く、英語で丁寧に状況を説明するスタッフの姿…。その「温かい気遣い」で、皆が慌てず、「和」を乱さず、200人はいたと思われる人たちがスムーズにロビーへと入ることができた。
ロビーにはすでに大型テレビが設置され、中央には連絡本部が作られている。この短い時間の間に、これだけの判断と配慮を、混乱を招くことなく行われた様子には本当に感謝と感心をせずにはいられない。
その夜、大きな余震が続く中、整理券が配られ、二班に分けてのバイキング形式の夕食。随時入る交通情報は、連絡本部に大きく表示され、それを見た人が出たり入ったりを繰り返す。その間、皆はお互いに譲り合い、場を和ませ、気遣う姿がみられた。
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