第5回
部屋の入り方と出方
2013.06.11 [藤井 寛子]
4~6月は、国内でも国外でも企業研修や講演が多い季節です。
研修や講演でよく取り上げられる課題の1つに、「部屋の入り方と出方」があります。
今回は、日常生活にも参考になる、礼を尽くした部屋の出入りのしかたをお伝えします。
そもそも礼を尽くした振る舞いは、部屋の出入りに限らず、相手にとってとてもよい印象を与えるものです。
無理のない礼儀作法が自然と身についた人は、必ず周囲に好印象を与えるはずです。
特に日本の文化には、目上の人や客人を敬い、礼儀をもって振る舞うことを重んずる習慣があります。
それは、他人の領域に了解を得ずして入り込むことなく、相手の了解を得てから(割り込むことなく)話かけたり部屋に入ったりする等を心がけることも含まれます。
これは、相手に迷惑をかけたり、相手の気分を害したり、相手の負担になってはいけないという、思いやりの心と気遣いから生まれたものです。
また日本人の作法は、物を大切にし、節約する精神が源となっているものが多くあります。
例えば和室において、敷居や畳の縁を踏まないようにすることは、敷居の横木や縁の織物を傷めないためで、物を大切にするという意味があるのと同時に、つまづいてけがをしないようにという配慮も含まれています。
気を遣うということは、物だけでなく人に対しても重要です。
大勢でガヤガヤと店や部屋に入ったり、大きな声を上げたりするのは、周りの人に迷惑をかけることになります。相手の領域にむやみに入り込むことになるからです。
これは、大人の私たちが実行できなければ、子どもたちも実行できないことは、言うまでもありません。
かつて「人間」は「じんかん」とも読んでいました。江戸時代は、人と人との「間(ま)」を大切にするよう教えられていたのです。
また茶道では、扇子を前に置いて座礼しますが、これは「結界」を作り、相手との間を取るためです。
現代の日本では、そうした「たしなみ」が軽んじられてきているのが現状です。一人前の大人として知識を吸収したり技術を向上させたりする努力だけでなく、人格や品格を磨く努力も怠らないようにしたいものです。
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