第2回
「日本語ボランティア」に参加する 実践編
2012.03.06 [村上 充]
最後に、自己紹介を兼ね、私の国際交流体験について、お話ししますね。旅好きが高じて、20代の終わりに会社を辞め、いわゆる貧乏旅行で、10カ月かけて世界一周しました。30歳の誕生日に帰国し、現在勤めている会社に就職し、再び働き始めたのですが、異なった文化を持った人々との交流はもうできなくなったんだなと、寂しく感じていました。そんなとき、同僚のT君に、「今度の週末、日本語ボランティアに行きませんか?」と誘われたのです。
1995年のある土曜日、T君に連れられて小学校の会議室に足を踏み入れると、そこには、中国、韓国、台湾、イラン、アメリカ、タイ、イギリスなど、世界各国から集まった外国人が30人近くいて、日本人ボランティアと1対1のペアになって、会話を「日本語」で楽しんでいました。それまで、自分の生活している地域に、こんな場所があるとは思ってもいませんでした。しかも、旅先では、つたない現地の言葉で苦労しながら意思の疎通を図っていたのに、ここでは、会話は日本語。しかも、日本語を使うことで喜んでもらえるのです。また、旅先での一時的な触れ合いと違い、日本に長期間暮らしている人たちとの息の長い付き合いができます。さらに、海外では、出会った人に騙されるんじゃないかといった緊張感がありましたが、ここでは、そんな心配も不要です。私が旅に求めていた交流の場は、童話の『青い鳥』のようにごく身近にあったのです。
この後、7年間、その日本語ボランティア教室に通い続け、いろいろな国の人々と触れ合いました。参加して実感したのは、ボランティアは誰かのためではなく、自分のためにするといったことでした。現在、『月刊日本語』という日本語教師向けの情報誌で編集長として働いていますが、日本語を教える楽しさを知る原点となった経験でした。
まずは、気軽に身近な日本語ボランティアの教室に、見学に出掛けてみては、いかがでしょうか。きっと、すばらしい出会いが待っていると思いますよ。
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