第3回
海外で日本語を教える人、学ぶ人 ~中国編・前編~
2013.06.25 [村上 充]
私なりの解釈ですが、中国では、インターネットで、FacebookやTwitterなどが利用できず、政治的なキーワードを検索しても閲覧できません。私たちが当たり前のように享受している自由なインターネット環境は、この国にはまだないのです。
その一方で、中国のネット人口は既に6億を越えていると言われています。いくら、国が言論統制を敷こうとしても、情報の自由化の流れは、もはや止めようがない状況にあるようです。そう考えると、学生たちが、メディア、マスコミの仕事に関心を持つのは、新しい時代を、自分たちの手で切り開いていきたいという思いが根底にあるのかもしれません。
胡さんたちを紹介してくれた駒澤先生への取材では、日本語科の学生たちが行った東日本大震災の被災者への募金活動の話、大学側の都合で突然、講師の契約を解除されそうになった時、教え子たちが協力し、学長に「駒澤先生を辞めさせないで」と嘆願するメールを1,000通も送ってくれたという話など、印象深いエピソードが次々と出てきました。教師と学生の関わり方が、日本の大学よりも、深く、濃いように思えます。中国で長く生活するための秘訣を聞くと、「自分の欲を考えず、10年は中国のために無私の心で働くべき。そうすれば、後は中国の人たちがずっと支えてくれる」とのことでした。
取材前、朱さんや胡さんと話をしていた時、駒澤先生に出会って、日本語を学ぶ楽しさを知ったこと、日本という国や日本人の考え方を理解したいという気持ちが強くなったと、熱く語っていました。
そういえば、取材の1年後、反日デモが発生した時、心配になって駒澤先生に連絡した時も、「日本語を学んでいる学生たちが議論をふっかけられて、ちょっとかわいそうだけど、私の仕事や生活には影響ありませんよ」とのことでした。国と国との関係は、すぐに冷え込んだり、熱くなったりと変っていくものですが、個人と個人の信頼関係は、簡単には変わらないものです。この秋、大きな希望を抱いて日本にやって来る胡さんが、日本という国で、何を見て、誰に会い、どう考えるのか。大きな期待を持って、見守っていきたいものです。
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