第4回
海外で日本語を教える人、学ぶ人 ~中国編・後編~
2013.07.23 [村上 充]
一方、初めて彼女ができた喜びを素直に語る学生は、スピーチの最後に「君は、ぼくの最後の恋人だ! ずっと一緒にいてください」と、お相手の女性がいない場所で、一方的にプロポーズし、拍手喝采を浴びていました。
そして、日本でもニュースで大きく取り上げられた高速鉄道事故で友人を失った学生は、「祖国中国に言いたい。二度と同じような事故を繰り返さないために、原因を公表してほしい」と堂々と語っていました。
スピーチをした学生の多くは、89年、天安門事件の起こった年の生まれです。当時、大学生だった私は、天安門広場前に集結した同世代の若者たちが自由を求めて立ち上がり、そして、挫折する姿を、テレビで見ていました。あの頃は、日本の好景気は永遠にはじけることなく続くものと思っていましたし、中国経済が今日のように発展する日が来るなんて、想像もしていませんでした。四半世紀が過ぎましたが、その間の変化の大きさとスピードは、中国のほうが激しかったに違いありません。
現在、日中関係は冷え込んでいます。しかし、お隣の巨大な国を理解するためには、国対国の国際問題という視点だけではなく、やはり、生身の人間同士で、お互いの顔を見ながら対話を重ねていくことが欠かせないはずです。「日本語」を学ぶことは、日本や日本人を理解することにつながります。
今日も、北京で、そして、世界各地で、日本語を熱心に学ぶ教える学習者と教師がいます。この連載は今回で最終回となりますが、日本語を教える仕事の魅力が少しでも伝わったなら幸いです。
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