第5回
仕事探しの前に――知って損はないヒント
2012.02.28 [出口 知史]
今回からは、定年前後にどのようなことを考えれば、より長く働くことができるかということについて考えてみたいと思います。
電通シニアプロジェクトが2007年に実施した、リタイアモラトリアム期(60〜65歳)における意識調査があります。結果は、「定年後における理想の生活と、実際の見通しにギャップを感じている」という人が大半でした。
例えば「経済的に豊かな暮らし」を望む人は90%いたのに対して、実現しそうだという回答は39%。同様に「自由気ままな生活」が80%に対して55%でした。
一方、「仕事以外のことに打ち込む」が83%に対して60%。海外移住については19%に対して23%、田舎暮らしも同様に40%に対して39%と、理想を実現できそうだと考えている人もいます。推測するに、彼らはもともと経済的に余裕がある人たちなのでしょう。
つまり、豊かな暮らしを望む人は実現の見込みは薄いと感じており、もともと豊かな暮らしをしている人はそのまま理想的な生活に移っていく姿が伺えます。
まず今の組織に留まることを目指しましょう
会社組織での生活が長いと、嬉しいこともたくさん経験してきた反面、理不尽なことや汚い部分に触れ、嫌な思いをしたこともあったでしょう。そんな中、仕事人生の最後に大きなカケに出てみようと考えている方もいるかもしれません。
長年抱いてきた夢があればもちろんその道を選ぶべきですが、特段そうした夢や目標がなければ、まず今の職場にい続けることを目指すべきです。職場が少々窮屈でも人間関係が悪くとも、経済的な安定という観点から見れば最もリスクが小さいからです。少々理想とかけ離れた話かもしれませんが、そもそも理想を実現できない人はたくさんいるということは先のデータが示していますし、経済的な安定と安心が得られれば、その後の人生における選択肢は広がるでしょう。
さらに言わずもがなですが、あなたの勤務先が、公的機関やそれに準ずる組織はもちろん、規制産業に属した企業や既得権益や特許など独自の強みを持っている企業、また好業績で財務基盤がしっかりしている企業であれば、より勤め続けることが得策です。
他人の芝生が青く見える瞬間はあるかもしれませんが、優位にある会社や組織というのは、社員に対するさまざまな恩恵(諸手当や福利厚生など)があります。その場にいるとなかなか気づきませんが、健康と同じで、失って初めてわかることもたくさんあります。
会社にい続けるために必要な努力については、第3回・第4回で述べてきたような「NG言動」を取らないことです。
ただ、会社から暗にリストラ宣告されたり、退職せざるをえないような雰囲気になってきたりした場合、ぎりぎりまで粘りつつも、次の仕事を探すことを考えなければなりません。すぐにあてが浮かぶ人はさておき、浮かばない場合はどう考えればいいでしょうか?
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