第1回
定年後は今の会社にいられない?
2011.10.11 [出口 知史]
私はコンサルティング会社や産業再生機構など投資ファンドの立場として、これまで数多くの企業再生や企業変革の現場を見てきました。企業の存亡が関わろうと成長への前向きなステップであろうと、企業組織においてそれまでと違う流れを起こす局面になると、必ず感情的な衝突は起こります。その結果として、思い通りに働くことができなくなる可能性もあります。この連載では、そうした場面で垣間見てきた材料を基に、年を重ねてもずっと働き続けたいと考えているかたがたにとって、わずかながらでもヒントとなるような情報を提供していきたいと思います。今後の人生をより豊かにする一助となれれば幸いです。
定年という言葉が現実味を帯びてきたとき、またはその前にでも、まず認識しておくべきことは、「今の延長のように働き続けることは、相当大変だ」ということです。
かつて定年後のライフプランは、「家族と趣味と仕事と、どれにどんな配分にしようかな?」といった具合に、働くことはただの選択肢の一部でしかありませんでした。真面目に働いてきていれば相応の蓄えもありましたし、子供も独立し、年金もあてにできたからでしょう。
ところが現在は、理由はそれぞれでしょうが、「働きたいかどうか」ではなく、「働かざるを得ない」と捉えることがごく普通になってきました。
厚生労働省による2011年の意識調査によると、就労で老後の生計を立てようと考えている人は、65歳以上では11.3%しかいない一方で、50代では31.3%、20代では42.2%を占めています。その理由の過半数は年金不信からくる不安です。ちなみに、2008年の同様のデータでは、65歳以上で7.5%、50代で15.5%、20代では21.8%でした。わずか3年でも、大きく意識が変わってきているのがわかります。
また他には、今後10年で15-64歳の人口が約790万人減っていく一方で、65歳以上は640万人増えていくというデータもあります。自分と同じ年齢の人口が増えていくわけではありませんが、現役世代に対する高齢者の比率は着実に増えていきます。
結婚についても昨今随分と話題にはなっていますが、今や晩婚化・未婚率上昇の流れは止まりません。さらには、時間をかけて吟味(?)した結婚が増えているのかもしれませんが、離婚率は横ばいのままです。つまり独立していった子供がいつ戻ってくるとも限りません。「いい歳なんだから、俺たちが死んだあともお前は勝手に生きろ」とは割り切れないのが親の心情でしょう。
これらの要因が複雑に絡み合い、結果として「人生の一要素として」ではなく「生きるために」働きたいという志望者が増えていきます。量的にも質的にも、働き続けたい高齢者にとっての競争環境は厳しくなる一方です。
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