第8回
企業人から起業人への道〈1〉;
知らなかった!気づかなかった!あれこれ
2012.05.22 [出口 知史]
前回は、より確固たるポジションの築き方について述べさせていただきました。今回からは少し話を変えて、退職後の選択肢の一つ、「起業」について述べていきたいと思います。
起業について書かれた書籍やサイトがあふれ、それだけでなく詐欺まがいの情報商材も多く存在することから、起業について悩む方は多いでしょう。起業が成功するかどうかはもちろん一概には言えないことですが、少なくとも最低限備えているべき条件というものはあるはずです。
私自身は投資ファンドなどに勤め、企業の転換期に立ち会うことを職業にしてきた経験があります。そのため、脱サラして起業していくシーンを見る機会、そして起業して活動されている方と様々なことに取り組む機会が多々ありました。起業をしたことがない私が述べるのも僭越(せんえつ)ですが、様々な人に共通していた点を3つ挙げさせていただきたいと思います。
まず1点目として挙げられるのが、言わずもがなですが、すぐに、そして中期的な土台を作るまでの期間を食いつなげるだけの十分な報酬が得られる見立てがあるかです。
脱サラ起業者の盲点
日本政策金融公庫総合研究所が2011年と2010年に行った調査(開業して1年未満の1443社に対するアンケート)によると、開業前に立てた目標に対して「未達である」と答えた法人は67%、また「現在赤字基調にある」と答えた法人が40%でした。
開業前と後、つまり予想と現実のギャップとして挙げられたのが、
・原材料費や仕入価格が予想より高い(25%)
・思ったより客単価が低かった(21%)
・商品・サービスへの需要が思ったほどなかった(17%)
・思ったより競争相手が多かった(14%)
となっています。そして最も多かったのが
・開業前には知らなかった支出がある(41%)
で、そのうち70%の法人が税金、健康保険、厚生年金の会社負担を挙げていました。
実はこの調査は、日本政策金融公庫が融資をした企業を対象にしています。平均開業費用が1,172万円であり、開業時の年齢として40歳以上が53%占めていることから、自分の興した事業について相当見識のあるベテランのビジネスマンが調査に回答していることがうかがえます。
客単価や仕入などは外部要因に影響されるため、見立てから外れても仕方がない要素はあります。しかし普通に考えれば、社会保険や税金などは複雑であるとはいえ、ある程度の計算で予測できたのではないかと思われるでしょう。でも、起業は文字通り人生をかけて挑むために、夢や希望に関連したことを考えることに集中してしまい、現実的な点を見落としてしまうことは致し方ないのかもしれません。
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