第9回
企業人から起業人への道〈2〉;5年後も目に浮かぶネットワーク
2012.06.26 [出口 知史]
緩やかなアライアンス
ストレートに言ってしまえば、カネになるコネクションがあるかというよりも、信頼関係をベースとした、継続的に飯の種を探し続けられる仲間を見つけられるかどうかが成否の分かれ目ではないかと思います。
個人宅の建築やリフォームに関わる業界では、自然とそうしたネットワークができているパターンが多いと聞いたことがあります(実際に私のマンションのリフォームをやってくださった方々がそうでした)。
それぞれ得意技を持った個人事業主の職人さんたちですが、求められればすぐ現場に集まり、終われば離れて別々に活動し、また声がかかると集まり…といった具合です。誰かが案件の相談を受けたら、あっという間に連絡を取り合ってスケジュールを組んで、仕事を融通しあい、顧客のニーズにこたえます。顧客にとってみれば、大手に一括して頼むよりも、管理間接費の負担がない分、個人でやっている職人さんに頼んだ方が安くなってありがたいはずです。
仕切り役になる人はマージンを取ってもいいのかもしれませんが、取りすぎると仲間関係が崩れてしまいます。暗黙のゆるいギブ アンド テイクの関係を多く築ければ、継続的な受注が期待できるでしょう。
例えば、人事労務畑のコンサルタントをしていた人がクライアントのオーナー社長から税金の相談を受けたら、税務畑のコンサルタントを紹介する。逆に、その税務畑のコンサルタントが別のクライアントから労務問題について相談を受けたら、前者のコンサルタントを紹介する、というように補完しあえる得意技を持った人同士が集まると理想的でしょう。
もちろんビジネスである以上、仲間であっても報酬・対価としてのお金のやり取りは出てきます。でも、資本関係や借金関係があるわけではない。誰かが困ったときは、代わりにツテをたどって仕事を探す。見返りはすぐに求めない。「困ったときはお互いさま」という、暗黙の了解がそこにある。そうした、カネが介在するつながりとは一段深い、人間同士の信頼に基づく仲間関係を作れるか、それが5年後も続くネットワークかが、継続して受注できるかどうかの大きな鍵を握っているのです。
次回は起業シリーズの最後で3つめの条件、「かけつけてくれる先輩・後輩」について述べていきたいと思います。
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