第10回
企業人から起業人への道〈3〉;かけつけてくれる先輩・後輩
2012.07.10 [出口 知史]
モテるのは努力の結果ですか?
インターネットが発達してから、玉石混交でありながら情報は簡単に得られるようになりました。傾向として、頭が良いといわれる人ほど分析力があるため、膨大な情報の中から必要なものをチョイスし、上手に加工して使うことに慣れていきます。するとたまに、ネットやテレビから得た情報は信じるものの、同僚や家族など近しい人の話にはうがった見方をするような人も出てきたりします。
人間は感情の生き物ですので、たったメール一本のやり取りで生じた小さなヒビが、やがて人間関係を壊してしまうことすらあります。そのため、相手の心の機微を感じる力は、ビジネスにおいて何よりも大事なことといえるでしょう。
学生時代からの長い付き合いで、お互いに絆(きずな)を認識し合っているような間柄だったら別ですが、社会人になってから知り合った人とは比較的短い時間の中で信頼関係を築いていくものですから、たった一度のミスでも取り返しのつかないことになりかねません。ビジネス社会において人間関係が豊かな人というのは、人と接している間中、相手への配慮を欠かしません。それは、やり取りの内容だけでなく、タイミングや手段にも及びます。
少し話は反れますが、そうした人は若いころから魅力的ですので、異性にもよくモテてきました。一方、外見を武器にモテていた人は、「何もしなくても、人と情報は勝手に寄ってくるもの」と思い込んでいることが多いです。そのため、ビジネスにおいては油断が多く、うまくいかないことがあります。同じ“若いころからモテてきた人”でも、ビジネス社会における歩み方は、大きく異なるケースが多いのです。年頃のお子様がいらっしゃって、「うちの子は自分に似てよくモテる」という自負がある方は、お子様の人気の理由をよく追究してみたほうがいいかもしれませんね…。
人間関係が広く、お互いの信頼も厚ければ、結果として入ってくる情報の量や質も豊富になり、タイミングも早くなってきます。それは、同業他社との差別化にもつながっていきます。
工夫のない言い方になってしまいますが、周囲の人間とお互いに信頼し合い、相手に対する配慮を欠かさず、地道に人間関係を広めてきたかたが、起業においても成功率が高いようです。
以上、3回にわたって起業における最低条件および気をつけるべきことを述べてきました。物を供給するビジネスを立ち上げるとなれば、設備や仕入れなどで初期投資が掛かり、少し別の条件が加わりますが、本質的な部分は同じです。考えれば考えるほど、起業とはいろいろなハードルがあります。その半面、夢もやりがいも無限大なのでしょう。
いずれにせよ一番やってはいけないのは、職探しを早々に断念して、起業以外に選択肢がないと勝手に思い込むことです。
次回は、新天地での注意点についていくつか述べていきたいと思います。
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