お取り寄せからみたニッポン

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第21回
岡山県・国産の高田硯で書を楽しむ

原石の採掘から製造・販売まで一貫して行う

高田硯は、光沢ある漆黒の硯。日本百景、日本の滝百選にも選定されている岡山県真庭市の「神庭の滝」に程近い、勝山町竹原の通称“硯山”から採れる黒色粘板岩で作られている。
この高田硯は、言い伝えによると、室町中期に玄翁和尚が高田の庄(現在の勝山町)を訪れて硯石を発見したのが起源といわれている。ちなみにこの玄翁和尚は、玉藻の前の九尾伝説で妖狐の精魂が宿る殺生石を砕いたとされている、岩に縁のある有名人。室町末期には、古文書にも高田硯が贈り物にされたという記載があり、江戸時代に入ると生産も盛んになったが、江戸中期には稀少な原石の乱堀を防ぐため、藩有されて採掘を制限。将軍献上品などとしても重用されたという。また宮本武蔵が愛用したという伝承もあるらしい。
その後、明治維新と共にその生産は民間に移され、現在は岡山県真庭市勝山の中島硯店が、原石の採掘から製造・販売まで一貫して行っている。

製品は、天然の原石の形を生かして、優美でやわらかな形状に仕上げられる。色は光沢ある漆黒だが、「金眼」「銀糸」と呼ばれる紋様や白色の線がでるものもあって、そうしたものはとくに珍重されている。石の質は硬すぎず軟らかすぎず、鋒鋩は全体にむらなく、キメ細やかで墨色が鮮明に出るという。
加工は、貴重な原石の破損を防ぐため、柄の長い独特なノミを肩で押しながら手作業で彫っていく。そのため、同じ形の硯はふたつと存在しない。昭和57年には岡山県指定郷土伝統的工芸品に指定されている。
良質な硯は、半永久的に使える。日常的な手入れは水洗いで十分だが、長く使っていると膠分が残ったり目詰まりして、墨がすりにくくなることがある。そうなると、専用の砥石で表面を研磨して「鋒鋩を立てる」のだが、中島硯店ではそうしたメンテナンスも行っている。手入れさえきちんとして大切に使えば、子や孫の代まで代々、十分に使えるのだ。

桐箱に入れた贈答品のほか、硯の石で作った文鎮や筆置き、干支の置物なども販売されている。黒い光沢が美しく、手触り滑らかな石の小物は、大切な人への贈り物としても良さそうだ。また、硯で無心に墨をする行為は、日常の疲れを癒し、心を静めてくれる。たとえ毛筆がそんなに得意ではなくても、たまには国産の硯を使って、豊かな時間を楽しみたい。

●岡山県>岡山県の伝統的工芸品
http://www.pref.okayama.jp/page/detail-18015.html

●中島硯店
http://www.shokokai.or.jp/33/3358110011/

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