第6回
シンメトリーと方向性
2012.05.15 [星野 正紀]
インテリアに置かれるモノ(設置されるモノ)の多くは、電化製品を含め、左右のシルエットがシンメトリーでできています。これは、安定性をデザインで示すためです。部屋に置かれているモノが「あちこちへ動くイメージ」だと困りますからね。
家具にスタイリッシュさを求めるデザインである場合は、先に述べた通りですが、ここで注意が必要です。とくに上下に方向性をもたせたモノには、不安定どころか、とても安定しているイメージを人は持ちます。
なぜでしょうか?
それは、地球上には重力が存在しているため、「地面に対して垂直にある方向性は不動的印象をもつ」という心理が働くからです。東京スカイツリーや東京タワーを見ても、安定していることがよく分かります。
一方、地面に対して水平にある方向性はいつでも「動作のある」イメージをもちます。
そう考えると「安定と不安定」は、モノの「左右(前後)のシルエット」が重要になるとお分かりいただけるのではないでしょうか。
家具において方向性の存在は必要無いように思えますが、仕事場の空間でクリエイティブな思案作業をするならばメンタル的にかなり有効な感じが致します。
それは、時の流れを意識したり、新風を得たりするためです。(=停滞を懸念)
しかし、毎日がそうであるわけではありません。気分的に、安定したいときももちろんあります。気持ちに合わせてその都度、身の周りの家具を取り替えることは困難ですので、やはり、落ち着き感のあるシンメトリーを選んでしまうのかもしれません。
話が再びクルマに戻りますが、横から見たスポーツカーには方向性があるデザインと言いました。しかしここで、クルマのフロントから見てみましょう。シルエットはほぼ、シンメトリーだと思います。
これは、ハンドルを切らない限り、決してクルマは横にぶれないという安全性を意味します。
デザインは、モノの見方、置き方、使い方でシンメトリーか否かを決定づけます。
「形状におけるスタイリッシュ」とは、そこから派生する価値といって良いでしょう。
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