第8回
エイジング(モノの経年変化を楽しむ)
2012.07.17 [星野 正紀]
逆の発想になりますが、エイジングを楽しめないモノもご理解頂けたかと思います。道具としての働きをキープしつつ、コストダウンを図るため素材を安価なものにした商品、リサイクル可能な設計と材質に替えられた商品など。これらは道具としての役割を果たせばそれで終わりとなるモノです。そのモノ自体に喜びを感じることは長くありません。愛着心を持ち、長い時間を共有したい気持ちを抱かせる商品ではないのです。
ここでもう一度「経年変化」に含まれる意味を考えてみます。
「材質の時間による変化」と「目的使用による劣化」が存在します。前者には平均的な変化が見られ、後者には使用者によって個性が生まれます。この2つからモノへのこだわりがはじまり、「道具としての価値」が「共に過ごす喜びある価値」へ移行します。
エイジングを楽しむコツをご理解頂けましたでしょうか。
昔の話で恐縮ですが、アメ車がまだとても大きかった頃、それらをこよなく愛した人たちがいました。その人たちの中でも特殊(?)な趣味の方がいて、「アメ車は洗車をしない」というものでした。見ると、塗装が剥がれるほど錆びつき、本当にアメリカを横断してきたかのような車でした。それは、今思うと冒頭に記した「演出」のエイジングと今回のテーマである「経年変化を楽しむ」それだったのです。
人は年を取っていきます。私たち人間は、いつまでもカッコ良く年を重ねていきたいと願っています。その気持ちとモノに抱く想いは本来、変わらないものだと私は思っています。
「時」(人生)を楽しく過ごすことは、「身の周りのモノにもこだわる必要がある」ことだと思います。モノにも年の取り方があります。それが毎日の生活に反映(影響)し、それが人生のカタチを形成するひとつの材料になるのです。
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