第11回
く う か ん (空間)
2012.10.16 [星野 正紀]
本物志向のレストランでは、インテリアにこだわり、料理に使う器にもベストチョイスが施されています。流行の店において、味は基より演出がより商品の価値を上げ、最高な「おもてなし」を目指すところでしょう。
今では一流レストランに限らず、ドレスコードを求めるレストランが増えてきています。その場に存在するものすべて(客の服装やマナーも例外ではない)を統一したデザインで環境づくりをすることを理想とします。これは、先に述べた「書院造、殿中の茶会」のようなものですが、決して否定するものではありません。
しかし、もし利休がこの世の中を見たら、やはり彼は否定的感情をもったに違いありません。何故ならば、「わび茶」は商品ではないからです。
レストランの目的は、料理(美・味)を通し、「幸せな」時間と空間の提供でお客様に喜んでもらう事です。一方、利休の目的はお茶を通しての、人間がもつ真意の対話であり、この世で大切なものとは何かという問答に尽きる事でした。利休の求めた「極小空間」は無の境地で考える事であり、彼にとって、煌びやかな器や空間は「雑念」でしかなかったのです。
「空間」を考える時、目的をはっきりさせなければ、多様な演出が付加価値になるという期待に反し、不本意な結果に終わる危険性があります。
私たちクリエイターは付加価値のプラス方向とともに、対局するマイナス方向(極力0に近い)も考えなければなりません。
私も、利休が理想とした「空間」を大切にしていきたいと思います。
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