第18回
重力と脚
2013.05.28 [星野 正紀]
それでは、具体的に考えてみることにします。
比較的大きなモノ、例えば家具や白物家電(洗濯機、冷蔵庫、食器洗浄機など)、テレビ、オーディオ機器といった普段、持ち運びしないものは脚が付いています。ただし、家具の中でも箪笥などは脚が無く床に直置きするタイプが多いのも事実。それは、部屋の一部という認識(キッチンのシンクと同様なイメージ)があるためでしょう。また、直置きにすることにより転倒防止のためなのかもしれません。しかし、最近では移動するときにキャスターが底部分から出てくる箪笥もあるのでこの場合、「脚付き家具」と言って良いでしょう。これらは、常時、立たせて使うもの。横に寝かせる理由が無いので脚があるのです。その訳は、床に傷を付けない、床との相性を良くする(平らな床で無い場合、融通が利く)、独りでに動かないようにする(ラバーソールを使って振動などで滑っていかないように)、または、キャスター脚なら、いざと言う時の移動に便利など。
一方、小さな道具でとくに手で使用するモノの中では、脚の有るもの、無いものに分かれます。例えば、電子機器、文房具など・・・今、私の机の上では電子辞書がありますが、裏面にひっくり返すとラバーの脚が4点、付いています。これは、きっと机に傷を付けないために、また滑らないようにあるのでしょう。あと一眼レフカメラが2台、乗っかっています。(笑)これも2台ともひっくり返すとボディにポッチ(今回は、脚と言ってしまいます。)が4点ずつ確認できます。その他、デスクトップ型PC、ノート型PC、スタンドライト、電卓なども脚らしきものが付いています。
反対に脚が付いていないモノを探すと・・・ 書物(脚が無い事に常識とは思わないようにします、クリエイターですので)、筆記用具(だからペン立てがある)、CD&DVD(ラックに入っているか、転がっている)、メガネケース、定規、ハサミ、カッター、ホッチキス etc
以上から、BOXに一括収納されるようなモノには、脚が無い方が多いですね。
また、手に取って使うモノのうち、「転がして置く」可能性が高いものには脚が付いていないことが分かります。モノは勝手に自立しません。人的処置(設置)です。まるで、「コロンブスの卵」。脚があると本来の道具として、機能を妨げる可能性もあります。その都度それらを立たせるにも手間が掛かっては作業効率が悪いので「転がして置く」のが正しいスタイルなのかもしれません。
では、これらに脚を付けないのがベストなのでしょうか?
脚を付けない設計もそれはデザインのひとつです。しかし、モノの成熟期で今考える幅を広げるには、新しい発想で「デザイン」が生まれる期待があります。脚を付けることでそのモノに「明確な立ち位置と表情」を与えます。また、天地と方角が決まり、モノの顔がハッキリすることも意味します。脚を設けるキーポイントは「重力(ジュウリョク)」。
ヒントは、グランドピアノの3本脚「異なる荷重」です。
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