第8回
枯れ山に咲く早春の妖精
2012.05.08 [西原 升麻]
ここを訪れたのは5月の初旬です。5月といえば、平地では新緑の季節。ともすると初夏のような気候になっていることもあるくらいです。
しかし山の春は遅く、5月になってもまだ寒く、草花や樹木の新緑もほとんど見られないということも多く、この山も上の方ではまだほとんどが枯れ木ばかりの状態でした。
薄紫のキクザキイチゲ
それでも、早咲きの山野草の花が訪れる人の目を楽しませてくれます。普通、早春の花というとフクジュソウの黄色やカタクリのピンクが頭に浮かびますが、この花は薄紫です。花の名は「キクザキイチゲ」。山野草の中では比較的大きな花で、かなりの美形です。菊の花のように細い花びらが円形に開いていて、傘のようです。色がはっきりしているので、少し離れていてもよく目立ちます。
イチゲといわれても、意味がすぐは浮かばないかもしれません。単純に浮かぶとすれば「一毛」ですが、「ゲ」は「毛」のことではなく、「華」または「花」のことで、「一華(一花)」と書き、花のことを指しています。これは一つの茎に花が一つだけ咲くからとされていて、ヒトリシズカ(一人静)やイチリンソウ(一輪草)と同じく、花の数を名前の由来としています。
花が白いアズマイチゲ
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