私が見つけたライフワーク(2)

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第8回
枯れ山に咲く早春の妖精

また、少し離れた場所に同じような白い花を見つけました。花のようすはキクザキイチゲとよく似ていますが、花の色は白です。キクザキイチゲの花は普通紫ですが、白花もあると聞いていたので、最初はキクザキイチゲの白花か思いました。
しかし葉を見ると、キクザキイチゲの葉とはどこか違うと思い、調べて見ると、こちらはアズマイチゲという別の仲間だと分かりました。「アズマ」とは、関東に多く見られるからつけられたということです。

左がキクザキイチゲの葉で、右がアズマイチゲの葉です

この二つの花はお互いに近い仲間なので、同じような場所で同じような時期に咲きます。他の草があるところはむろんのこと、草もほとんど無いところにもけっこう咲いていました。
このような土と枯れ葉しかない枯れ山に、こんなにきれいな花だけが咲いているのは少し不釣り合いなようですが、何とも不思議な感覚がする空間になっていました。

こんな枯れ山に咲いていました

この花の仲間は、他の草が茂ってくるころには地上から姿を消してしまいます。春の一時期だけ顔を見せてくれるのです。
西欧ではこういう春の一時期だけ花を咲かせる植物を「スプリング・エフェメラル」と呼んでいます。エフェメラル(ephemeral)とは、直訳すると「短い」とか「はかない」という意味ですが、西欧では、この短い命のことを「短命の美」としてポジティブなニュアンスで使うそうです。

スプリング・エフェメラルの名にふさわしく、優しい感じのキクザキイチゲアズマイチゲ

そのために、スプリング・エフェメラルを「春の妖精(ようせい)」とも呼んでいるそうです。何とも心地よい表現です。日本でも花の短さを例える言葉や感覚はあります。例えば日本人が大好きな「サクラ」は一応、日本版「短命の美」ですが、妖精といった感じではなく、「潔さ」とか「はかなさ」の美学になっています。どちらかというと西洋的な考えより東洋的な考え方の方が好きな私ですが、短命の花に限っては、この西洋的なポジティブな考え方が好きです。

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