第12回
あやしく咲くヒガンバナ。かつては重要な植物だった
2012.09.11 [西原 升麻]
花の名前は普通カタカナで表記されますが、それは専門家が植物を和名で呼ぶときカタカナを使うと決まっていることが影響しているのでしょう。
植物の専門家がカタカナで表現するので、図鑑などでも植物の名前はすべてカタカナ表記です。
専門家はそれで特に問題は生じないのかもしれませんが、一般人にとっては分かりにくいし、親しみもわきません。
例えば、キンケイギク、キョウチクトウ、ハンゲショウ。
カタカナだと意味がつかみにくいのですが、漢字で表現すると…
・キンケイギク→金鶏菊(金のニワトリのような菊?)
・キョウチクトウ→夾竹桃(竹や桃と関係がありそう)
・ハンゲショウ→半夏生(季節に関係がありそう)
このように、漢字の意味から何となくどんな花なのかが推測できます。
ヒガンバナより彼岸花の名前が似合います
ヒガンバナも、「ヒガンバナ」と書くより「彼岸花」と書いた方が、彼岸のころに咲くことがわかります。実際、ヒガンバナは彼岸のころに咲くのです。一昨年はひどい猛暑だったので、お彼岸には間に合いませんでしたが、昨年は例年通り咲いていました。
今年はどうか分かりませんが、このくらいの猛暑ならいつも通り彼岸のころに咲くのではないでしょうか。
このヒガンバナ、別名の多い花として知られています。マンジュシャゲ(曼珠沙華)、ノダイマツ、カエンソウ、イカリバナ、ネコクルマ、ジュズバナ、シビトバナ、ユーレイバナ、ドクユリ、カブレバナ、スミラ、ドクスミラなど、なんと1000以上の別名があるそうです。これほど別名の多い花も珍しいと思います。
ほかにも、別名の多い植物としてイタドリがありますが、それでも540程度だそうです。別名が多いということは、それだけ人間との関わりが深いということでしょう。イタドリなどは枕草子にも載っているくらいですので、昔からよく知られていたのだと思います。
ところがヒガンバナは、不思議なことに古典にその記述はほとんど見られません(このことは後で触れます)。
あやしいほど赤が映えるヒガンバナの花
よく知られた花ですが、人々に好まれていたとはいえません。別名にもあったように、シビトバナ、ユーレイバナ、ドクユリ、カブレバナ、ソウシキバナ、ハカバナ、ジゴクバナなどなど縁起の悪い花とされ、墓や仏教関連の別名が一番多いそうです。
実際、不吉なイメージが強く、愛される存在ではありません(最近は少しずつ変わってきているようですが)。私も子供のころ、親や近所の人から「摘んでも触ってもいけない」と言われた記憶があり、怖い花だと思っていました。
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