第15回
山野草は実や種も楽しめる
2012.12.11 [西原 升麻]
このように、縦に分かれる果実は、「果実の簡単な分類」で説明した通り「さく果」といって、最後にサヤが乾燥して閉じるので、中にある種は遠くにはじき飛ばされます。確かに、同じ所で芽が出ても共倒れになるだけなので、種は離れたところに何とか移動しようと工夫しているのでしょう。
スミレの割れた果実
スミレの種、先に白っぽい物が見えます
スミレの種は丸い形ですが、よくみると一部に白っぽいものがくっついているように見えます。実は、ここにも工夫をしていて、この部分にはエライオソームというえらい(?)名前がついています。エライオソームとは、ギリシャ語で油の塊(かたまり)を意味しており、脂肪酸や糖分でできているので、それを好むアリが遠くまで運んでくれるのです。種自身は好まないようで、最後には捨てられるから無事に生き延びられるのだそうです。スミレの種は、戦略的によく考えられた作品だといえますね。
タツナミソウの果実?
果実風ガクの中の種
タツナミソウの果実も、面白い格好をしています。私は最初に見たとき、「宇宙戦艦ヤマトの先端」やUFOのように思えました。単なる球形や、フットボールのような単純な形ではありません。また、果実といいましたが、調べてみると、実はこれは果実ではないのです。ガクの部分が花後に膨らんで、このような形になったものだというのです。ガクはなかなかの役者で、花びらの代わりをしたり、果実風に化けたりすることもあり、変幻自在のiPS細胞のような能力を持っているようです。
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