第15回
山野草は実や種も楽しめる
2012.12.11 [西原 升麻]
以前紹介したヤマジノホトトギスは、花が噴水のようでしたが、果実はその給水管だけが残ったような格好になります。そして、よく見ると果実一つに葉が一枚ずつ付いているのが分かります。これを正面から見ると、果実が人か人形の頭で、葉が衣装のように見えませんか?そのように考えると、緑のピエロのように見えてしまいます。
果実になっても、充分観賞に値する姿をしているホトトギスだと思いました。
迫力あるニゲラの果実
花は青もありますが、これは白のニゲラ
ニゲラの果実は、花に似合わず大きな王冠のようにふくらんだ奇妙な格好をしています。しかも、周りにある針のような葉が、果実を大事そうに守っているように見えるのが不思議です。
英名の一つに「devil in a bush(茂みの中の悪魔)」があるそうですが、これはこの果実のイメージから付けられたものでしょう。
ニゲラは、名前から分かるように日本の花ではなく、南欧原産の園芸種で、日本に来たのは意外に古く江戸末期だといわれています。英名のもう一つに「love in a mist(霧の中の恋人、愛)」があり、こちらは花の優雅な様子から来たものだと思います。一つの植物に正反対の意味を持つ名前があるというのは、面白いことです。
足袋の先端みたいなヌスビトハギの果実
名前に似合わず可愛い花です
最後は、ヌスビトハギの果実です。
ヌスビトハギとはまた妙な名前ですが、この名前は果実の様子からつけられています。果実は半月の形で、盗人がつま先立ちで歩いた足跡に見立てたものだとされています。ほかに、この果実がひっつきむしで、人間や動物にこっそりくっついて移動するやり方が泥棒みたいだからという説もあります。いずれにしても、この花にとってはありがたい名前ではないと思いますが、ユーモラスな感じもありますね。
ちなみに、花は名前のイメージとは裏腹に、非常に小さくてかわいい格好をしています。もっと花にふさわしい別名があっても良さそうなものですが、無いのだそうです。ちょっと残念ですね。
冬に入ると紅葉も終わり、花の少ない風景になってきますが、果実や種はまだ多く残っていることもあります。時には立ち止まって、花の終わった山野草たちをながめてみませんか?新しい発見や驚きがあるかもしれません。
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