第16回
草木にも「めでたい」ものがあります
2013.01.22 [西原 升麻]
めでたい草花といえば、フクジュソウでしょう。漢字では「福寿草」と書き、福はしあわせ、寿は長命やめでたいことをさすのですから、まことに「めでたい」名前です。こんなめでたい名前がついたのは、花の少ない冬の季節に黄金色の花をお正月に咲かせるという貴重な花だったからで、その昔は元日草(ガンジツソウ)と呼ばれていたそうです。江戸時代からお正月の縁起花として人気があったようです。
咲きかけたフクジュソウの花
パラボラ状に咲くフクジュソウの花
確かに今でもお正月にフクジュソウの花が出回ることがありますが、大抵は開花時期を早めるように育てられたもので、普通咲くのは早くても2月だといいます。それなのに「元日草」というのは不思議に思えますが、この元日は昔の暦、つまり陰暦の正月を指しています。試しに、昔の暦を実際に見てみましょう。
例えば西暦1631年、和暦でいえば寛永8年、将軍徳川家光の時代です。
寛永8年 | 現代の西暦では | |
1月1日 | 2月1日 | |
2月1日 | 3月3日 | |
(中間は省略) | ||
10月1日 | 10月25日 | |
閏 | 10月1日 | 11月24日 |
11月1日 | 12月23日 | |
12月1日 | 1月22日 |
昔の元日は今の2月初め、年によっては2月中旬になることもあったそうです。これなら元日にフクジュソウが咲いたとしても不思議ではありません。
ところで、陰暦の暦には閏(うるう)10月という不思議な月があります。これは陰暦の一月が29.5日で、3年経つと33日も遅れてしまうので、2〜3年に一度、ひと月追加していたのです。これを閏月と呼んで、閏年と同じような帳尻あわせを月単位でしていたわけです。
ポットで販売されていたフクジュソウ
フクジュソウは西洋にもあるそうですが、花の色は黄色ではなく赤が普通のようです。もし、日本のフクジュソウも赤い花だったら、めでたいお正月の花になっていたでしょうか?早春を感じさせる色はやはり黄色ですから、日本のフクジュソウは黄金色でよかったなと思います。
今年は、久しぶりに近くのホームセンターでフクジュソウのポット苗を一つ手に入れてきました。今年は寒い日が続いているので、咲くのは少し先になりそうですが、早春の香を伝えてくれる日が楽しみです。
コメント