第17回
山で修行しているような山野草
2013.02.26 [西原 升麻]
本当におもしろい形を作ったものですが、この仏炎苞の形をどこかで見た記憶はありませんか?
色が赤く、ずんぐりむっくりとした形をしているので、なかなか思いつかないかもしれませんが、実はザゼンソウはミズバショウの親戚なのです。
ミズバショウのそれは白く背も高いので目立ってきれいですが、ザゼンソウのそれは背が低く色も地味です。一見同じものに見えないかもしれませんが、よく見ると似たような構造をしていることが分かります。
ミズバショウの白い仏炎包
仏炎苞とはよく名付けたもので、仏像の後ろに置かれている光背、その中でも燃え盛る炎を表す「火焔光(かえんこう)」に似ているからとされています。
それにしても、色と形が少し違っただけで、片や初夏の湿原を代表する花のスターとしての地位を得、片や地味であまり知られていないというのは、人間界の現実のようで、なんとも面白いと思います。
さて、ザゼンソウの外側が花でないとすると、花はどこでしょう?
実は中に見える玉のような塊が花なのです。それも小さくダイヤ型に分かれている小区画それぞれが花です。花どうしはくっついていて独立していません。
このザゼンソウは、雄しべと雌しべの周りにあるひし形のところが花びらに当たるもので、しかもその土台部分がくっついて合体しているのです。
そんな言葉があるかどうかは分かりませんが、「集団合体花」と表現するのがふさわしいような姿です。
これがザゼンソウの花です
ザゼンソウは、ミズバショウほど美しいわけでもなく、サトイモのように食材として家庭の食卓にのぼるわけでもありませんが、どこか憎めない愛嬌のあるユーモラスなその姿は、一度見たら忘れることがない記憶に残る花です。
寒い時期に見に行くのは大変ですが、多くの株が開花する2月下旬から3月になれば、気軽に見に行けると思います。いくつかの自生地では、ザゼンソウまつりが開催されたり、自治体の広報で開花のお知らせがあったりするので、機会があれば山の修行草を見に出かけてみてください。
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