第22回
名前が気の毒な花(ハエドクソウ、ヘクソカズラ)
2013.07.23 [西原 升麻]
そして、ハエドクソウは姿だけでなく、分類も変わっています。
ある百科事典の表現を借りると、「1科1属1種の特異な植物である」。どの仲間とも違った不思議な花なのです。
まあ、分類法といってもいろいろで、時代によっても変遷があり、最近の遺伝子を基本にした分類では科としての仲間はできたようですが、少なくとも外見からの分類では仲間が見つからないほど変わっているということです。
がく片の先が3つに別れ、カギ状に曲がっています
ただ、花が小さいこともあり、この特異ぶりは一目では分かりません。
この花の特徴の一つは、実の中に一つしか種がないことですが、これは肉眼では分かりません。もう一つは、がく片の先が3つに割れてカギ状に曲がっていることで、これはよく見れば分かります。
そして、がくの先が途中で緑から濃い紅色に変わっていることも分かります。色が途中で変わっていることも特徴なのかどうかは分かりませんが、小さい花のそのまた小さいこのカギ状の部分が、植物の分類において専門家たちを悩ませたと聞くと、「へぇ~」と思ってしまいます。
ところで、ハエドクソウという名前は花の様子や性質から来ているわけではありません。
形態の様子から、サガリバナやサカサバナとも呼ばれています。これは、すらっと伸びた茎から花が下向きに咲くからでしょう。
ハエドクソウはその昔、根をすりおろしたりして、ウジ殺しやハエトリ紙などに使われたそうで、「ハエドク」という名前はそこから来ています。実は人々の生活の役に立っていたのですね。 それにしても少しかわいそうな名前なので、新しい名前をつけてあげたい気持ちになってしまいます。
もう一つ、気の毒な名前にヘクソカズラがあります。
カズラは漢字で書くと「葛」で、ツルのこと。しかし、問題は前半の文字です。
「屁」に「糞」……一文字だけでもひどいのに、二つも続いては見る気もなくなるし、見かけても近寄るのをためらってしまいそうな名前です。
でも、花に出合えば名前のことは忘れてしまいます。
確かに美しいという感じは受けませんが、ツボミは白い実のような形で、花は白と赤のツートンカラーで、案外目立つ花なのです。
白と赤のヘクソカズラの花
白っぽく細長いツボミ
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