第22回
名前が気の毒な花(ハエドクソウ、ヘクソカズラ)
2013.07.23 [西原 升麻]
それがどうしてこんな名前がついたかというと、そのにおいから来ているといわれています。
図鑑の説明でも、
・全体に悪臭がある
・全草に悪臭がある
・葉をつぶすと強い悪臭がある
など、いずれも「悪臭」という表現が使われているのです。
そこであるとき、勇気を出してにおいをかいでみました。
まず、恐る恐る近づいて近くでにおいをかいでみたのです。
すると…「ん?」あまりにおいはしません。普通の草のにおいがするだけです。
それではと、引きちぎったり、葉をもんでみたのですが、青臭いにおいはするものの、悪臭というほどではありませんでした。
悪臭になるには何か条件があるのか、または人によって感じ方が違うのかもしれません。
ほかの植物に絡まってはびこるヘクソカズラ
そういえば、少し気になることがあります。この花は古くから知られているようで万葉集にも歌われていると聞いていたので調べてみました。
「かわらふぢに 延(は)ひおぼとれる屎葛(クソカズラ) 絶ゆることなく宮仕(みやづかへ)せむ」
かわらふじ(今のサイカチまたはジャケツイバラ)にまとわりつき、広がり乱れているクソカズラのつるが絶えないように、絶ゆることなくいつまでも宮仕えしようというような意味だそうです。昔の宮仕えは、生半可な気持ちでは務まらなかったことが伺えます。
正面から見ると灸(ヤイト)の跡のように見えると言います
どうやら昔は「ヘクソカズラ」ではなく「クソカズラ」だったみたいですね。
旺盛な繁殖力が歌人の目を引いていたようです。もしかしたら、「クソ」といわれたゆえんは臭いではなく、あきれるほどのはびこり方にあったのかもしれません。
「ヘクソ」と悪名高くなったのは、ずっと後の時代ともいわれています。
実はこの花、ヤイトバナ(ヤイト=きゅうをすえた跡)や、サオトメバナ(田植えの早乙女がかぶるかさ)という別名もあるのですが、これらの名で呼ばれることはあまりありません。
一度普及した名前が変わることは難しいと思いますが、汚名返上に協力してやろうと思う方は、実際ににおいをかいで臭くないことを実感してください。
ただし、首尾よく汚名返上となるか、はたまた汚名認定となってしまうのかは、何とも言えません。
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