第16回
カタクリは堪え忍ぶ花だった
2015.03.30 [西原 升麻]
もう一つの特徴は花の色で、ピンクの言葉が充てられます。ただ、同じピンクでもサクラやモモの明るい色と違って、カタクリは少し紫がかった色のせいか憂いをおびた感じのピンクと言えます。そして、サクラもそうですが、奥の方に模様があります。カタクリの場合は赤紫の太い縁取りで三山の形、花びら片のようにも見えます。昆虫にとっては下から見るとこれが花びらのように見えるのでしょうか?
カタクリのピンクは少し紫系
サクラ(ソメイヨシノ)は明るく薄いピンク
カタクリは花びらの中にまた花びらが
サクラ(河津)の模様は少しぼやけ気味
それからオシベ、いやその先端にある花粉袋が面白く、少し拡大するとまるで風防マイクロホンかチョコスティック菓子のように見えます。花の大きさに比べこれだけ大きいのは、咲いている期間が短いから花粉の量を増やしたのか? とも思えてしまいます。
写真を逆さまにしてみました
確かにカタクリは1年のうち2,3ヶ月しか地上で生活をせず、大半は地下生活なので光が不足するのでしょう。発芽してから何年も葉だけで過ごし花は咲かず、栄養をため込むことに専念するようです。そして苦節8年以上経って、やっとのことで咲くようになるのだとか…。
そう言えばセツブンソウやフクジュソウも発芽から咲くまでに3年以上かかると言いますから、桃栗三年…ではないですが、「節福三年片栗八年」(字余りだけど)と言えそうです。
カタクリは多くの県で絶滅危惧種になっていて、全国的に数も減り、群生地では人の保護が必要な状態が続いています。人知れず咲いているカタクリに出合える機会は少なくなったようです。
カタクリは発芽から何年も片葉の状態が続くとか…
花見の定番であるサクラが散り際の美とはかなさで日本人の心に響くとすれば、カタクリは辛抱強い生き様と憂いに満ちた容姿・花色が我々の共感を呼ぶような気がします。どんちゃん騒ぎには向いていませんが、たまには静かなカタクリの花見もオツなものかもしれません。
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