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第23回
イソギクは菊らしくない

海なし県にいるせいか、今まで海岸をほとんど歩いたことがありません。当然、海岸の花は見たことがなかったので、思い切って海の花を見に海岸へ行きたいと思いました。ただ、考えて見ると、海岸といっても海のそばには砂浜、岩場、林などいろいろあり、どう言う所へ行けばよいのでしょう?

海岸の風景海岸の風景

まず目的の花を決めました。形も変わっていて、名前も海岸らしいイソギクです。変わっているので人気があり、園芸用としても流通していると言います。磯と名が付くくらいですから、磯に咲いているのでしょうが、磯とは具体的などんなところ? と言われるとすぐにはイメージが湧きません。辞書によると、磯とは海の水際、特に石や岩の多い所と説明されています。波打ち際の岩場と言ったところでしょうか?


海岸岩場の風景海岸岩場の風景

場所のイメージは分かりましたが、具体的にどこの地域にするかが問題です。日本は島国で回りが海だから何処でもよさそうに思えますが、イソギクは意外に分布域が限定され、千葉から静岡までの太平洋岸と伊豆諸島だけだと言います。その中から遠くなく、確実に見られそうな伊豆高原にしてみました。


イソギクが咲く海岸の岩場イソギクが咲く海岸の岩場

訪れてみると、実際に咲いている場所は同じ岩場でも、岩そのものより海岸の岩場から続く場所でその上に土や植物が薄く堆積している感じの場所が多かったと思います。キクの中では背の低いイソギクならではのぎりぎりの生育場所を選択したと言えそうです。

イソギクの花
イソギクの花

花を見て分かるのはキクと名が付いているのに意外に菊らしくないと言うことです。他の野菊と比較してみればすぐ分かりますが、外側の花びら(舌状花と呼ばれるひとひらが一つの花ですが)がないのです。普通の野菊の場合、花の中心付近は筒のような形をしているので、筒状花と呼ばれる花の集合体で、回りは舌のような形をした舌状花と呼ばれる花群となっている2重構造です。イソギクは舌状花を持たず、筒状花だけの花になっているので、奇妙な形に見えています。


タンポポは舌状花だけタンポポは舌状花だけ

イソギクは筒状花だけイソギクは筒状花だけ

アワコガネギクは両方あるアワコガネギクは両方ある


イソギクは筒状花だけですが、逆に舌状花だけの花もあります。例えばタンポポです。普通の野菊のように見えますが、よく見ると、筒状花がありません。キクの仲間は舌状花と筒状花の両方を持つもの、舌状花だけのもの、筒状花だけのもの、と三つの生き方を選択したようです。これらの遠い先祖はどんな姿だったのでしょうね?




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