らくらくわくわく 山野草見て歩き

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第28回
渡良瀬遊水地の花-2 小さくても存在価値のあるキタミソウとエキサイゼリ


水路の水位低下時は地面が見え

水位上昇時には水没します


キタミソウが成長する期間中は水が少なく、花が終わって種が出来た後は水中に没し、翌年水が少ない時に現れる地面でまた発芽して成長するのだそうです。こんな環境は普通の自然では無理でしょう。しかし、渡良瀬遊水地にはぴったりの場所があります。地内水路と呼ばれる調整池水位調整のために水量を調節している人工の川です。うまい所を見つけたものだと思います。


エキサイゼリの外観エキサイゼリの外観

特殊環境の恩恵を受けているものは他にもあります。エキサイゼリと言うセリの親戚です。セリも山野草なのですが、今は野菜としてスーパー店内の方がよく見られます。このエキサイゼリは普通のセリに似ていますがかなり小さいと言えます。


やはり小さいエキサイゼリの花やはり小さいエキサイゼリの花

コセリとかヒメセリと言っても良さそうなものですが、わざわざ別の名前が付けられています。
エキサイとは富山藩10代藩主前田利保の号名、益斎と言う人名から来ています。この殿様、植物学に力を入れていたようで江戸にいるとき、見つけたこれを絵師に描かせたと言います。その絵を見つけた牧野富太郎博士が名付けたようです。役に立たない意味で別名オバゼリと言う名前を変えてやりたかったのでしょうか?


役に立つかどうかは別にしてこの花、日本の固有種で日本にしかありません。そして絶滅危惧種なのでこれも結構貴重な植物と言えます。


セリは茎からまた茎が伸びた先に葉が付き

エキサイゼリは茎から直接一対の葉が出ます


葉は普通のセリとよく似ていますが、セリは茎からまた茎が伸びて葉が付くのに対してエキサイゼリの葉は茎から直接出ています。よく見ないと分からないですね。背丈の小さいこの草は背の高い草に囲まれては生きて行けません。それがここ渡良瀬遊水地では毎年ヨシ焼きを行っているので、ヨシなどが成長する初夏までに実を付けてしまうと言う早業を使って生き抜いているようです。

キタミソウもエキサイゼリも多分、本来の生育環境が日本にはあまりないのでしょう。それでも半人工半自然の場所を見つけて逞しく生き抜いています。
二つの小さな草は直接保護するだけでなく、環境保全も絶滅から救う有効な手段だと言う事を感じさせてくれる花たちでした。

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