らくらくわくわく 山野草見て歩き

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第39回
世界にここだけの花 カッコソウ

植物の説明に固有種と言う表現を時々見かけます。これはその場所に特有のもので、そこにしかない植物の事を指します。その場所としては国または地域のような単位が多いようです。国なら日本固有種、県だったら県固有種と言うことになります。今回のカッコソウも固有種です。カッコソウの名前は知る人ぞ知る有名な花ですが、一般的にはあまり知られていません。最近は花の時期にテレビで報道されることもあるので少しは知られるようになりましたが、山野草図鑑でもこの花はあまり載っていません。

カッコソウとはこんな花ですカッコソウとはこんな花です

その大きな理由は特定の地域限定の花だからだと思います。地域と言っても地方単位や県単位など幅がありますが、カッコソウはもっと狭く群馬県東部の山にだけに生育します。数も極端に少なく絶滅危惧種の中でも最も危険度が高いランク絶滅危惧ⅠA類に指定されています。
2012年には通称「種の保存法」の対象となって、取引や譲り渡し、販売目的の広告などが禁止されました。

サクラソウの花

カッコソウの花


カッコソウはサクラソウ科に属していて、花だけを見ればサクラソウそのものでよく似ています。でも種の保存法に指定されるくらいですからどこか違っています。人によって違いのイメージは異なるかもしれませんが、私には葉の形と花の付き方が違って見えました。

サクラソウの葉

カッコソウの葉


普通のサクラソウの場合、葉は最初が二等辺三角形。葉が開くと三角おむすびを縦に伸ばしたような形です。カッコソウの方はと言うと、それほど深くはありませんが周囲がカットされたカエデのような感じでずいぶん違った形に見えます。
そして花のつき方ですが、普通のサクラソウは茎の頂点に何輪かの花をつけるのに対してカッコソウは茎の途中にも花をつけるものがあります。つまり多段に花をつけるのです。実際には2~3段といいますが、私が見たときには2段のものしか見つかりませんでした。よく探せば3段のものもあるのかもしれません。

サクラソウは1段で花は茎の頂点に

2段に咲くカッコソウ


山の中にあると言うオオサクラソウ(実物はまだ見ていませんが)はサクラソウよりカッコソウに似ていて、特に葉はカッコソウのように、てのひら状に周囲がカットされています。ただ違いもあるようで、オオサクラソウの茎や萼には毛が無いと言いますが、カッコソウには多くの毛があります。微妙な違いなのでよく見ないと分からないかもしれませんが…。

カッコソウは茎や萼に毛がありますカッコソウは茎や萼に毛があります


ところで、サクラソウの仲間なのに名前がカッコソウ、変わっていると思いませんか? カッコで思いつくとすれば記号としての( )=括弧ぐらいです。
調べて見ると、植物学者にして登山家の武田久吉が「民俗と植物」の中で江戸の花戸、伊藤伊兵衛による地錦抄附録に勝紅草(カツコウソウ)の表現があると書いています。


地錦抄附録に書かれる勝紅草地錦抄附録に書かれる勝紅草

正確に言えば、伊藤家当主は代々同じ伊藤伊兵衛を名乗っていて地錦抄は三代目三之丞、附録は四代目(五代目という説も)の武政が書いたと言われます。
その地錦抄附録には、「……濃紫の色艶治にして朱にもすぐれて見る目を眩(マドハス)ほどなりとて勝紅草とよぶなん……」とあります。
江戸の園芸家だったらこう言う名前もつけてもおかしくはありませんが、自分で名付けたのか人に聞いたのかは分かりません。

カッコソウに限らずサクラソウの仲間は美しいが故に盗掘が多く絶滅危惧種になったと言われます。絶滅危惧の名が取れてハイキングで手軽に見られるようになるといいですね。

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