第7回
ミズバショウと不動明王
2014.06.20 [西原 升麻]
この白い部分はじつは花ではなく、棒状の表面にある小さく黄色いのが花です。白の部分は葉が変形した苞と言う、本来はツボミを保護するものが特別に大きくなったもので、仏炎苞と呼ばれています。仏炎苞とはまた奇妙な名前ですが、不動明王の背中にある火焔(火炎)光背に似ているから、仏の後ろにある炎のような形の苞と言うわけです。
火焔光背はあらゆる障害を焼き尽くすと言われていますが、ミズバショウの場合は形だけで色が白なので燃えるような荒々しいイメージはありません。
不動明王の火焔後背が仏炎苞の由来とされています
この仏炎苞のように元々葉だったものが、このように白く変化したのは花に見せるため、と言われています。でも何故葉っぱなのでしょう?花に似せるのなら、いっそのこと花を変えてしまえば、と思うのですが…。実は花も元々葉から進化したと言われるので、遺伝子を一種のプログラムと考えれば、葉のプログラムの一部を変更して作った花からよりも、葉の段階から変更した方が簡単だったのかもしれませんね。
ところで、ミズバショウは水芭蕉と書きます。あの俳聖松尾芭蕉の芭蕉と同じですが、松尾芭蕉が見つけたというわけではありません。門人から贈られた芭蕉=バショウがことのほか気に入ったようで、芭蕉を俳号にも用いるようになったそうです。
この芭蕉は大きな葉っぱが特徴のバナナの仲間です。水辺にあって芭蕉のような大きな葉をしている、というのでミズバショウと呼ばれるようになったと言われています。確かに花が終わったあとの葉は大きく、ミニのバショウと言ってもよいくらいです。
最初から大きいバショウの葉
ミズバショウの葉も花後に大きくなります
松尾芭蕉は「芭蕉野分して盥(たらい)に雨を聞く夜かな」とバショウを詠んでいますが、ミズバショウは見ていなかったのか俳句には詠んでいないようです。もし、尾瀬の大群落を見ていたならどんな名句を残したのか?と思うと、見ていてほしかったと思うのは私だけではないでしょう。
ちょっと残念ですね。
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