第18回
その17“果実との交換(11)”–果実の育成法(2)–
2012.02.21 [山田 英次]
機械的に比率の維持が出来るか
あなたの大切な1000万円を資産運用に投入し、
●株式・・・350万円
●債券・・・550万円
●現金・預貯金・・・100万円
と分散したとしましょう。
(注)国際分散投資には、無数の分散モデルが存在します。下記は一例です。
投入から1年が経過したころ、以下のような状況になっていたとしたら、皆さんは何を考え、どうしたいと思いますか?
つまり、分散したそれぞれのカテゴリーは、1年後に以下のようになっている訳です。
●株式・・・350万円 ⇒ 825万円
●債券・・・550万円 ⇒ 570万円
●現金・預貯金・・・100万円 ⇒ 105万円
株が2倍以上に膨らんだのに対し、債券と現金・現預金は微増という結果です。
ここで最も多いのは、上り調子である株式に資金を集中させてしまうパターンです。
もちろんそれが功を奏することもありますし、資産運用に絶対の手法はないのですが、ここでは利回りの向上よりも「負けないこと」を優先する国際分散投資のベーシックなハンドリングを紹介します。
そのハンドリングとは、「元の比率に戻す」ことです。つまり、上り調子である株式の天井まで付いていきたい気持ちを捨てることが求められるわけですが、これができず、運用をギャンブル化させてしまうケースが少なくありません。
理想的なハンドリングを見てみましょう。
株式が2倍以上に膨らみ、1000万円だった資金がトータルで1500万円になったことは喜ばしいのですが、これ以上株式を深追いしないことがポイントです。
この例では、株式の一部を売却して利益を確定し、その資金を活用して、まだ上昇余地のある債券を買い増しし、比率を元に戻すという作業を行っています。
1年前に利回りが高かったカテゴリーが、今年も高いとは限りません。(これは、過去20年間の4カテゴリーの利回りの推移をご確認いただければ、すぐに分かります。)勝ち馬に乗ろうとせず、いつもどのカテゴリーにも均等に注意を払い、ポテンシャルを感じながら、冷静に比率を維持させることが大切なのです。
なお、このハンドリングは、この例のように特定のカテゴリーが跳ね上がったパターンも去ることながら、リーマンショック時のように複数のカテゴリーが下落しつつある状況下でも行うことが必要で、かなりタフな精神力が必要です。
しかしこれができれば、急下落後の回復期にもきちんとリバウンドを拾える可能性が高くなるでしょう。
果実との交換(9)をご覧いただいた方の中には、誰でも3%以上の利回りが簡単に手に入るものと思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、マーケットの上昇時も下落時も、いつも淡々と比率を維持し続けられるかどうかで、結果は大きく変わってくるのです。(果実との交換(9)のデータは、20年間にわたり常時4カテゴリーの保有比率を均等に維持した場合の平均利回りです。)
次回は、分散する際の比率決定についてお話したいと思います。
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