第6回
夢のマイホームは、夢なのか(後編)
2013.07.23 [山田 英次]
皆さん、こんにちは。
ファイナンシャルプランナーの山田英次です。
前回のコラムでは、家賃に関する下記の認識が、全くの誤解であることを、具体的数字を用いて証明しました。
『家賃を払い続けていても、ドブに捨てている様なもの』
確かに賃貸に住み続けると、5年たっても10年たっても何も手に入りませんから、気持ちは分かりますが、そのような感性だけの判断に頼っていると、将来、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。やはり、お金については、きちんと数字で考える癖をつけて頂きたいと思います。
さて、今回は、2つ目の誤解である下記認識についてお話をすすめていきます。下記の説明、皆さんもどこかで聞いたことがありませんか?
『家を買った人は、自分に万が一の事があった時に、持ち家を家族に遺すことが出来る、つまり、住宅ローンの支払いが免除されるからお得』
『お得な』無料サービス?
住宅ローンの支払いが免除されるからお得・・・
皆さんが、常識を持った社会人であるのであれば、落ち着いてもう一度考えてみて頂きたいと思います。もし、皆さんが銀行の立場だったら、この『お得』なサービスを無償で提供したいと思いますか?
ここで言う、お得なサービスとは、『誰かにお金を貸す時に、もし、その人が死んでしまったら、借金を棒引きにする』サービスなのですが、これを住宅ローンの借入先として、選んだ銀行からの素敵なプレゼント(恩返し)だと考えているのであれば、それは、明らかな誤解です。
人は、ある一定の確率で亡くなるものですが、銀行が亡くなった方に貸していたお金を、何の理由もなく免除することはありません。銀行が、自腹を痛めてその借金をなかったものにする理由など、何もないからです。
実は、この、『お得』に見える制度は、単なる有償サービスであり、皆さんがよく知っている生命保険の一種によって提供されているものとなります。
つまり、住宅ローンを組む時に、生命保険にも加入する事になるのですが、その掛け金は、もちろん、お金を借りる人の負担なのです。
例えば、2500万円の住宅ローンを組んだAさんに万が一の事があったとすると、その時のローン残高と同額の死亡保険金が給付されるような仕組みになっているのです。(住宅ローンの残債は、この保険金で一括返済される事になるので、あたかも住宅ローンが免除されたように感じるだけなのです。)
なお、30歳の男性が2500万円の住宅ローンを、35年間固定金利3%という条件で組んだ場合、35年間で支払う保険料の総額は約180万円程度となります。
これを毎月均等に支払ったとすると、≪180万円÷35年÷12カ月=約4300円≫の負担となります。
2500万円を借りた世帯主に万が一の事があった場合の『安心感、お得感』の代償は、月々4300円程度だということですね。
この保険制度の事を団体信用生命保険、通称「団信(だんしん)」といいますが、これは、お金を借りた側、貸す側の双方にメリットがある仕組みだと言えます。
住宅ローンを借りた一家の大黒柱に万が一の事があると、大黒柱を失った遺族は住宅ローンの負担に(恐らくは)耐えられず、窮地に追い込まれる事が予想されます。また、お金を貸した銀行も資金を回収できずに困ってしまうので、それを(お互いのために)避ける制度が必要だという事なのです。
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