フロム・ナウ流 有料老人ホームガイド

バックナンバー

第24回
認知症ケアに希望を持たせてくれる介護付き有料老人ホーム「NRE大森弥生ハイツ」

重視するのは自由と自主性。「管理」はしない

「大丈夫ですよ」
と、Oさんは事もなげに言いました。

「うちは自由を最重視していますから、ご入居者を閉じ込めたりはしません。
施錠していませんから、みなさん自由に外出して行かれますよ。
お出かけされる際、声掛けさせていただくだけです。
最初のうちは、問題ないかどうか、スタッフが後ろからそっと見守りますけどね。それで必要があれば、その後も邪魔しないように付いて行きますし。
幸いここは駅から離れており、繁華街も遠く、良い意味で落ち着いた土地柄です。
ご入居者の行動範囲は限られていますから、これまで交通事故は一度も起きていません。
ときどき、ご自分がどこにいるのか判らなくなる方もいますが、そんなときは探しに行くので大丈夫です。捜索願を出したことは数回ありますが、すべて事なきを得ています」

でも、それでご入居者は良くても、万が一の際はご家族から訴えられる心配もあるはず。
そうしたときのために、「訴えません」みたいな一筆をもらっていたりはしないのでしょうか?

「それもしません。
だって、自由に外出するのはあたりまえの権利です。
ノーマライゼーションの考え方に照らしてみても、わざわざ一筆もらうというのはおかしい。
我々は、ご入居者を管理するつもりはありません」

そうなんだ…。
ということは、もしかしたら認知症の入居者はいない???
「いいえ、定員50人中、3分の2以上の方が認知症です。でもみなさん、安全な範囲以内で行動していますよ」

Oさんはあくまでも自信ありげ。
「我々は援助者。管理者になってはいけないと思っています。
管理すればするほど、入居者の既存の能力は失われてしまう。
たとえばよく徘徊(はいかい)といいますが、失礼な言い方です。徘徊ではなく、ご本人には目的や理由がちゃんとあるんです。
体が不自由な方の場合も…たとえば車イスに乗っていただいたほうが事故はないでしょう。でもそれでは歩けなくなってしまう。
うちのホームでは、転倒リスクは歩ける力を維持向上することで予防します。
我々は介護の専門家です。
安全に歩ける環境を整え、何かあった場合には最善の対応ができるのがプロだと思います」

このやり方は功を奏し、「大森弥生ハイツ」の入居者は皆、入居する前よりも介護度が下がり、元気を取り戻しているそうです。

コメント