フロム・ナウ流 有料老人ホームガイド

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第24回
認知症ケアに希望を持たせてくれる介護付き有料老人ホーム「NRE大森弥生ハイツ」

その気にさせる工夫で医師のアドバイスの上をめざす

バレンタインデーの昼食。ハートがいっぱい。

高い自由度のほかにもう1点、「大森弥生ハイツ」のケアの特徴は「その気にさせる」工夫です。

そんな特徴がよく表れているのが料理です。
見学に訪れた日はバレンタインデーで、特別料理をごちそうになったのですが、普通食もミキサー食も同じような印象になるよう盛り付けてありました。
パレンタインデーらしいハートマークが可愛らしいですよね。
しかも盛り付けに工夫があるだけではないんです。

「今日のお料理には、いくつのハートが隠れているでしょう?」なんていうクイズまで添えられていたのです。
これは厨房(ちゅうぼう)チームのアイデアだそうです。遊び心がありますよね。

ミキサー食でも極力普通に、おいしそうに
見えるよう工夫されています。

「うちの入居者は、医師からミキサー食というアドバイスを受けていた方でも、ちゃんと柔らかめの普通食が食べられるまで回復される方が多いです。
通常ミキサー食は料理を全部一緒にミキサーにかけるので、何を食べているのか判らなくなってしまいますよね。それでは食べる楽しみがないし、食欲がなくなってしまうのはあたりまえです。
うちでは、ミキサー食であっても、何を食べているのか分かるよう工夫するし、おいしく調理します。だから、ご入居者は食べる楽しみを取り戻し、えん下の機能も戻ってくるんです。
大切にしているのは、医師のアドバイスをうのみにしないこと。
それでもし問題があるとしたら、食欲が出過ぎて太ってくることぐらいでしょうか(笑)」

「大森弥生ハイツ」はフロアーごとに分けて介護する、大家族のようなユニットケアを採用しています。
各階にキッチンがあり、見学した日も昼ぐらいになるとぷ~んとおいしそうなにおいが漂ってきました。
生活の香りです。

「食事の時間が近づいてくると、キッチンからいいにおいがしてくる…この感覚が重要なんです。自宅にいるのと同じように、生活感を持って欲しい。
厨房のスタッフと『今日のおかずは何?』なんていう会話を交わすのも楽しいですよね」

ランチタイムの食堂は賑やかでした。
これはいいと思ったのは、スタッフも一緒にテーブルを囲み、同じ料理を食べていたこと。世間話や料理の話をしながら、和気あいあい。
そして、ほとんどの入居者は介助なしで食事をし、中には隣に座った介助が必要な方のお世話をしている人までいたこと。

「家族なら、一緒に同じものを食べるのはあたりまえですよね。我々はスタッフを本当の家族だと思っていただきたいんです。
食事も、できるだけご自分で召し上がっていただきます。それが機能維持につながりますから。こぼしても、落としてもいいんです。ちなみに食器は、あえて普通の陶器を使っています。そのほうがおいしいし、普通ですからね」

さらに付け加えれば、食事時間は一斉ではなく、時間帯に幅を持たせ、好きなときに食べられます。

このほかにも、旅行に行きたくなる工夫、買い物に行きたくなる工夫、お風呂に入りたくなる工夫など、さり気なくも、よく考えられたアイデアが随所に見られ、何よりも入居者の顔がこれまで行ったどのホームよりも輝いていたのが印象的でした。

人気のある同ホームは、当然ながら入居待ち状態。
でも、入居する前から介護の相談に乗っているとか。
「入居前の面談時から、うちのホームのケアは始まっていると思っています」

認知症になっても輝いていられるケアがあるという発見に、気持ちが明るくなりました。

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