第10回
ストレスコントロールの重要性
2012.10.16 [平田 統久]
中小企業のオーナーの方々と何十年もお付き合いしておりますが、つくづく彼らは孤独な存在だと思い知らされます。
様々な判断の場面において、自分が「最後の砦(とりで)」であり、悩んだときも後ろを振り返って相談できる人がいない。そのプレッシャーたるや、大変なものです。そして、それが24時間365日続いているのです。
特に、判断すべき守備範囲が非常に広いというのも難しい点だと感じます。それは、営業推進や資金繰りだけでなく、人事・労務、社員の冠婚葬祭、果ては懲戒事案まで対応しなければいけません。
大企業であれば、「○○担当常務」のように分掌するのが普通です。もちろん中小企業の中には、オーナーを補佐する役員がいる企業もありますが、最終判断は全てオーナーに委ねられているというのが現状だと思います。
「会社帰りによく1人で飲みにいく」と言うオーナーがよくいます。それも、水割り2杯程度を軽く飲み、30分程度でぱっと帰るという感じで。それは、その時間でストレスを発散するというより、「鎧(よろい)を脱ぐ」という感覚に近いようです。つまり、戦闘モードから家庭モードに切り替えるというわけです。
今回は、このストレスコントロールが事業承継に非常に大きな影響を与えるという話をしたいと思います。
どんなに忙しくても、ストレスを家庭に持ち込まない
昔、非常にカリスマ性を持ったパワフルなオーナーがいらっしゃいました。
この方は、自宅に帰っても完全に仕事モード。「仕事の虫」であるご本人にとって、それはそれで充実されているのですが、大変なのはご家族です。ご本人はそうする意図は無くとも、部下に対するように妻に接し、命令し、子供も新入社員のように扱ってしまっていたのです。つまり、仕事モードのときに創業者オーナーが放つオーラの強烈なパワーに、家族が心底疲弊してしまったのです。
会社を発展させてきたオーラに家族が悪影響を受けるのは残念なことですし、このことに気が付いていないオーナーが存在するのも事実です。
確かに、創業期のオーナーは日々激務との戦いです。彼らの息子さんたちからは、「親父に抱いてもらった記憶がない」などのコメントもよく聞かれます。
会社の黎明期には、全く家庭を省みられないかもしれませんが、そんな環境下でも、事業と家庭生活をうまく両立できたケースを見てみると、ある共通点があります。それは、オーナーが「ストレスを家庭に持ち込むべきではない」ということをきちんと理解していたことです。
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